ジョーマローンというブランドを、ほとんど知らないまま入店しました。
ロゴは見たことがある。お高い。それだけです。実家に帰ったとき、弟がジョーマローンの香りについて妙に熱く語り出したことがあって、「そんなに?」という気持ちで聞いていた記憶があります。でも、どんなブランドで、何がそんなに特別なのかは、まったくわかっていませんでした。
普段、香りは好きですが香水は苦手です。満員電車で誰かの香水が鼻に刺さるとき、じんわりと頭が重くなる感覚が何度もありました。「香水=キツいもの」という思い込みがずっとあって、フレグランスの専門店を本気で見て回ることすらしてきませんでした。
それでも、マーケターとして「実際に体験してみないとわからない」という思いでお店に入ってみました。白黒のシックな外観に「ちょっと近寄りにくいな」と思いながら。
この記事は、そのときの体験と、初心者でも迷わない「ジョーマローンでの香りの選び方」をそのまま書き残したものです。

「元々はバスオイルのブランド」というルーツを知って、見え方が変わった
入店した瞬間から、「香水店」という先入観と実際の空間がずれていることに気づきました。香水(コロン)のほかに、ボディクリーム、バスアイテム、キャンドル、ルームスプレー、そして車用のディフューザーまで並んでいます。「香水を売っているお店」ではなく、「生活のあらゆる場面に香りを届けるブランド」というのが正確な表現かもしれません。その理由は、ブランドのルーツを聞いてすぐに腑に落ちました。
創業者はもともと、フェイシャルトリートメントとバスオイルからスタートしていた

「ジョーマローンは、元々バスオイルなどから始まったブランドなんです」とスタッフさんが教えてくれました。
「え、香水ブランドじゃないんですか?」と思わず聞き返すと、「創業者のジョー・マローンが、フェイシャルトリートメントを行いながら手作りのスキンケアやバスアイテムを作っていたのが始まりなんです」と説明してくれました。
「香水を売るために立ち上げたブランド」ではなく、肌のケアや入浴体験が出発点というのは、まったく想定外でした。
だからこそ、ボディケアのラインナップがこれほど充実しているのだと知って、並んでいる商品の見え方がひとつ変わりました。
白黒の店内は思ったほど怖くなかった。お香まであることに驚いた

店内をぐるりと見渡していると、「お香もあるんですね!」と思わず声が出ました。
スタッフさんが「そうなんです、男性のお部屋なんかにも人気ですよ」と言っていました。イギリス発のモダンなブランドのイメージとお香の組み合わせは意外でしたが、「生活のあらゆる場面に香りを取り入れる」という設計で見ると、ラインナップの幅に一気に納得感が出てきました。
また、外から見ていた「近寄りにくそう」な印象は、入ってすぐに消えました。スタッフさんが自然に話しかけてくれて、「知識ゼロなんですが」と言いやすい雰囲気がありました。
「一番人気から嗅いでみましょう」。迷ったらこの一言を言えばいい
何十種類もの香りが並ぶ店内で、「どこから手をつければいいかわからない」という状態になりました。
そのとき、スタッフさんが「まず一番人気の香りから試してみましょうか」と提案してくれました。この一言があるだけで、迷子の状態から一気に前に進めます。どのお店でも共通して感じることですが、「選び方がわからない」と正直に伝えることが、最高の接客体験への一番の入口になります。
「洋梨の香り」なのに甘くない。イングリッシュ ペアー & フリージアが一番人気の理由

まず試したのが「イングリッシュ ペアー & フリージア」です。「洋梨」と聞くと甘い香りを想像しましたが、嗅いでみると全然甘くありませんでした。フルーティーでありながら軽くて、清潔感のある爽やかさがあります。
「これ、確かに男性でも使えますね」という感想がそのまま出ると、スタッフさんが「男性のお客様も全然使っていただけます。男女問わず人気なんですよ」と言っていました。
「ローズ」や「ペアー(洋梨)」という言葉から連想するイメージと、実際の香りはかなり違うのだということを、ここで学びました。
「石鹸系の香りはありますか?」と聞いたら、ジョーマローンにはなかった
「石鹸系の香りが好きなんですが」と伝えると、「ジョーマローンには、石鹸そのものの香りはないんです」と教えてもらいました。清潔感のある香りを石鹸で表現するのではなく、「果実の自然な香り」や「海塩のミネラル感」で表現するのがジョーマローンのスタイルだということです。
そこで案内してもらったのが「ウッド セージ & シー ソルト」でした。
ウッディでありながら、海塩のさらりとした感触がある爽やかな香りで、「清潔感が欲しい方にはこちらがおすすめです」と言ってもらいました。「石鹸っぽい」という希望を伝えても、まったく違う切り口から答えを出してくれる。それがプロの提案だと感じました。
オノリカ監修 「石鹸の香り」というのは、実はとても漠然とした表現です。石鹸に使われている香り成分はブランドによって異なりますが、多くの場合「清潔感がある」「すっきりしている」「重くない」という感覚を求めているケースがほとんどです。香水を選ぶとき、「石鹸系」という言葉に縛られるよりも、「甘くない」「すっきりしている」「ミネラル感がある」など、自分が感じたいニュアンスを言葉にして伝えると、スタッフはより的確な提案をしやすくなります。
初心者向け|最初の一本の選び方 まずスタッフさんに「一番人気から見せてください」と伝えましょう。
「イングリッシュ ペアー & フリージア」を基準に、「これより甘い方がいい」「もっとすっきりした感じがいい」と言うだけで次の候補を絞ってもらえます。「石鹸系が好き」「甘いのは苦手」など日常の言葉で十分です。
「香りが被るのが嫌」という悩みを、重ね付けが丸ごと解決してくれた
一番人気の香りに惹かれながらも、「これだけ人気なら、みんな同じ香りになりませんか?」と聞いてみました。スタッフさんは「実はそういうお声は多くて」と言いながら、「それを解決するのがジョーマローンならではの重ね付けなんです」と教えてくれました。
ジョーマローンには、複数の香りを組み合わせて自分だけの香りを作る「フレグランス コンバイニング」という文化があります。
2つの香りを重ねると、世界にひとつの自分だけの香りが完成する

「イングリッシュ ペアー & フリージア」に「ウッド セージ & シー ソルト」を重ねると、フルーティーな香りにウッディなミネラル感が加わり、単体のどちらとも違う香りになります。
「これで被ることはないですね」と思わず言ったら、スタッフも「そうなんです、重ねると完全にオリジナルになりますよ」と嬉しそうに言っていました。
「人気だから買いたいけど、かぶるのが嫌」という悩みには、これが一番の答えになります。
「重ねる順番」にはセオリーがある。強い方を先につけるのが正解
「2つを重ねるとき、どちらを先につけるんですか?」と聞いてみると、スタッフさんが即座に「香りの強い方を先につけていただいて、その上から別の香りを重ねるのが綺麗に香らせるコツです」と教えてくれました。
さらに、スタッフ個人のおすすめとして「フルーティーな香りに、甘すぎないバニラを少し重ねるのが好きなんです」という話も出てきました。「バニラって甘そう」と思ったら、「ジョーマローンのバニラは大人っぽい甘さで、くどくないんですよ」と補足してくれました。
定番に自分流のアレンジを加えることで、誰とも被らない香りが完成するのだという発想は、香水の楽しみ方そのものへの見方を変えてくれました。
オノリカ監修 複数の香りを重ねる「レイヤード」は、ジョーマローンが特に得意とするアプローチですが、香り選びの基本として知っておくべき原則があります。強い(重い)香りをベースに先につけ、軽い(明るい)香りを後から重ねることで、それぞれの香りが干渉しすぎず、バランスよく混ざり合います。逆に軽い香りを先につけると、後から重ねた強い香りに消されてしまうことがあります。「どちらが強いかわからない」という場合は、スタッフに聞けばすぐに教えてもらえます。
ジョーマローンのピローミストって何? 寝る前に枕にかけるだけでいい、眠りのための香り
ボディケアのアイテムを眺めていたとき、「ピローミスト」という聞き慣れない名前の商品が目に入りました。
「これって何ですか?」と聞くと、「寝る前に枕やシーツに吹きかけて使う香りです。最近ギフトとしてもすごく人気なんですよ」と教えてもらいました。
「眠りのための香り」という発想が新鮮で、ここが今回の体験の中で一番「知らなかった世界」でした。
ラベンダーが欠品するほど人気だったのに、カモミールも試したら捨てがたかった
ピローミストには「ムーンフラワー & ラベンダー」と「カモミール」の2種類があります。「ラベンダーはずっと欠品していた時期があったくらい人気なんです」とスタッフが教えてくれました。
それを聞いてラベンダーを試すつもりで両方嗅いでみると、カモミールが「柔らかくて、寝る前でも全然邪魔にならない」という印象で、思っていた以上によかったです。
「ラベンダーを目当てに来たのにカモミールにして帰るお客様が多いんですよ」とスタッフさんが笑いながら言っていたのが、妙に納得でした。
オノリカ監修 ラベンダーは古くから「睡眠をサポートする香り」として知られており、副交感神経を優位にしてリラックスを促す効果が研究でも確認されています。一方、カモミールも同じく神経を落ち着かせる作用があり、「眠りにつく前の緊張をほぐす」という点ではラベンダーと同等以上の効果を持つとも言われています。「ラベンダーは知っているけど、カモミールは初めて」という方も、一度嗅ぎ比べてみることをおすすめします。自分の体がより「いい匂い」と感じた方が、そのときの自分に必要な香りです。
枕だけじゃない。帽子にもマフラーにも「香りを忍ばせる」使い方があった
「ピローミスト」という名前から、寝具だけに使うものだと思っていましたが、スタッフさんが意外な使い方をいくつか教えてくれました。クッションやソファ、カーテンなど日常的に触れるファブリック全般に使えるだけでなく、「帽子や冬場のマフラーにも、シミにならない程度に吹きかけると香りが長続きしますよ」とのことでした。
「肌に香水をつけるのが苦手」という人でも、身に着けるものに香りを忍ばせるという使い方ができるのは、香水初心者にとってハードルが大きく下がる情報です。また、「ルームスプレーとピローミストはどちらがいいですか?」と聞くと、「布生地に定着しやすいので、香りを長く楽しみたいならピローミストの方が持ちがいいです」と教えてもらいました。
初心者向け|ピローミストの選び方 「香水は苦手だけど、寝る前に少し香りを楽しみたい」という方には、ピローミストが最初の一本に最適です。
まずラベンダーとカモミールの両方を実際に嗅いでみて、「なんかこっちの方が落ち着く」と感じた方を選びましょう。ギフトとしても人気が高く、「眠れない」「リラックスしたい」という悩みを持つ方への贈り物としても選ばれています。
「入りにくそう」は完全な思い込みだった。スタッフさん、めちゃくちゃおしゃべりだった
今回のジョーマローン体験で、一番大きく変わったのは「高級フレグランスブランド=入りにくい」という思い込みでした。白黒のシックな外観と、店内に静かに並ぶ洗練されたボトルたち。「話しかけると値踏みされそう」なんて勝手に想像していましたが、実際はまったく違いました。
知識ゼロで「よくわからないんですが」と言ったら、一番盛り上がってくれた

「香水についてほとんど知らないんですが、どう選べばいいですか?」と伝えた瞬間から、スタッフさんの説明がどんどん弾みました。
一番人気の香りを出してもらい、石鹸系はないという話になり、重ね付けの説明に移り、バニラの個人レシピが飛び出し、ピローミストのマフラー活用術まで教えてもらいました。
「わからない」と正直に言った方が、スタッフさんとしても提案しやすいということを、ここでもまた実感しました。
高級感のある外観と、実際の接客の親しみやすさのギャップが、今回の体験で一番印象に残った部分です。
まとめ|ジョーマローンは「香水が苦手な人」の入口にもなれるブランドだった
今回の体験で変わったことが3つあります。
「香水は人に纏うもの」という発想が変わりました。眠りのためのピローミストという選択肢を知ってから、香りは「外に出るときにつけるもの」だけではなく、「自分の日常を整えるツール」でもあると感じるようになりました。
「人気の香りはかぶる」という悩みが解決しました。重ね付けという文化を知ってから、「同じブランドで同じ香りを使っていても、組み合わせ次第で誰とも違う香りになる」という発想が生まれました。
「入りにくそう」という思い込みが消えました。「わからないので教えてください」という一言が、最高の接客体験への入口になることを、ここでも実感しました。
香水が苦手だという方も、「強い香りが苦手」なだけで「香りそのものが嫌い」なわけではないかもしれません。まずは「ピローミストで寝る前に試してみる」という小さな一歩が、新しい香りとの出会いになるはずです。
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